指輪 


先日、仕事が終わって駅まで自転車で行き、鍵をしめようとしたときに、小銭入れに入れてある指輪を落としてしまいました。

「あっ」と思いましたが、なぜか「まあいいか」という気持ちがおきて結局拾わずにホームへ向かいました。



この指輪は前に付き合っていた彼女のものです。

私達が出会うずっと前に彼女にはつきあっていた彼氏がいました。
その彼氏は酷い家庭環境で育ち、喧嘩っ早く、気性の荒い性格だったそうです。
彼女が、昔自分でとても気に入って買った指輪があったそうですが、その指輪をその彼氏はカッとなって投げ捨ててしまった、そんなことがあったようです。


その彼氏は事故で徐々に視力を失い、絶望的になり自ら命を絶ってしまったのですが、彼女の事をとても強く依存的に偏愛していたようです。

命を絶つ前に書いた日記を読んで、彼女も自分に強い罪悪感を感じ大きなショックを受けました。

彼女は自殺したのは自分のせいだと自分を責め続けて十年以上も生きてきて、そして私と出会いました。

恐らく彼女の中には、彼が彼女に非常に強い執着心を持っていて、自分だけが幸せになることを昔の彼氏は絶対に許さないだろうという確信を持っていたのだと思います。

私も彼氏の日記の内容を教えてもらいましたが、ぞっとしたのを憶えています。

そういったものが強く作用して、彼女の身に様々な心霊現象のようなものを起こしたのではないかと今は想像しています。



その指輪は、その彼氏が彼女に悪かったと思い、彼女に返そうと自分で苦労して手に入れたもののようでした。
自分の部屋でそれを見つけたとき、彼女は彼の記憶を無くしていて、それを彼女が持っていると悪い状況に引き込まれるので、私がずっと持っていました。

悪霊としての彼に対しては私は鬼のように怒りを抱いていましたが、その指輪の件だけは何となく悪い気がせずに、いつか彼女に返してやろうかという思いがありました。

それで別れた後もずっと持っていたのですが、それを落とした事など初めてでした。


で、なんか、まあ、いっか。
という気持ちになっている自分に気づいたんです。

多分、もう落とした場所には無いだろうと思います。


せっかく?落としたのに、わざわざ私が拾うこともないような気がして。

私は自分にとって大切なものを大事にしよう。

余計なものを、義務感で背負い続ける必要はないんではないかと。


これは後になって考えた事なんですけどね。

そんなことがありました。

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